2017.12.3

ツクルバ代表 中村真広氏と、ビスポーク代表 長田の講演レポートを公開しました。 「経営視点のクリエイティブが、企業成長のカギになる!」

Report

クリエイティブは「伝えるためのものづくり」から「経営視点で課題解決をするためのものづくり」へと変化しています。クリエイターには「事業の上流から携わるスキル」が求められていますが、その一方で経営者側にもまた「クリエイティブを理解する力」が必要とされています。

そこで今回は、自らを「場の発明カンパニー」と称する株式会社ツクルバの代表取締役CCO 中村真広氏と、アートディレクターからクリエイティブディレクター、ブランドコンサルタントへと活動の場を広げた、株式会社ビスポーク 代表取締役CEOの長田敏希氏によるトークショーを開催し、企業成長のカギとなる「クリエイティブ」について語っていただきました。参加者の皆さまとコミュニケーションをとりながらのトークショー、質疑応答コーナーではたくさんの質問をいただきました。その様子をダイジェストでお伝えします。

自分が使いたい!と思えるか

それがサービスをつくる基準になる。

 

長田 ツクルバさんは、「実空間と情報空間を横断した場づくりを実践する場の発明カンパニー」というビジョンの中で様々な事業を作られていますよね。実際に事業を作っていくステップとしては、ビジョンを明文化した上で、事業を作り上げるのでしょうか。

 

中村 いいえ、先に事業があって、その後にミッションやビジョンができました。創業時は、サービスが当たるかどうかもわからなかったので、やりたいことを事業にしようと「co-ba」を始めたんです。そして新たに「cowcamo」というサービスを始めた時に、メンバーも増えていくことを想定して、ツクルバとして大切にしていることを言語化しようと考えたのがこのステートメントでした。

 

長田 人数が数十人規模になってくると、ビジョンを固めていないと違う方向にいってしまいがちですよね。

 

中村 はい、「cowcamo」を始める前は15人くらいの小規模チームでした。そこから、営業チームやエンジニアチームをつくっていかないといけない。一気に急拡大するぞ、という覚悟の元で言語化していきましたね。

 

長田 ツクルバさんはコミュニケーション設計が上手だなと思うんです。僕、実は「cowcamo」はツクルバさんのサービスだって初め知らなくて。先にサービスを知って、面白いなあと思っていたら実はツクルバさんのだったという感じです。顧客の心理をしっかりと考えて、サービスを利用する人がワクワクするようなコミュニケーション設計をされているなぁと思っていました。

 

中村 先にブランドが出てくるというのは、僕らにとって理想的かなと。たとえばポッキーをよく食べる人がどこの会社が出しているものかで選んでいないと思うんですね。「co-ba」だけの時は、「株式会社co-baですか?」ってよく言われましたし、「co-ba」に関してはツクルバ推しもしていませんでした。

 

長田 トップのビジョンが明確なので、開発基準や実行ステップに一貫性があるんだと思います。もう一つ伺いたいのが、サービス開発の基準づくりってどういうふうにされているんですか?

 

中村 まだまだ創業者が議論しながら作っているフェーズですが、大事にしているのは、「自分が使いたいサービスになっているかどうか」です。創業者が自分の体温を乗せてそのサービスを語れることは重要じゃないですか。ツクルバでいうと、創業してオフィスを借りようと思った時に、テンションが上がる場所がなかったんです。だったらつくるかと。そこでつくったのが「co-ba」です。

 「cowcamo」のサービスを作った時も、「ツクルバでマンションのリノベーションをやってみよう」という感じで始めてみたところ、不動産業界の商慣習にぶつかって。単価が高いものを売った方が良く、築浅のタワーマンションと比べて築古のリノベーション物件は売りにくい商材でした。だったら僕らがアクションしていかないと、都心部のリノベーション物件が流通しないと思ったんです。そういう「自分ごと化」は常にありますね。

 

長田 マーケティングではターゲットを細かく設定しますが、あくまで仮説ですので、リアリティが持てない場合があります。その時に、自分が欲しいか?という基準に置き換えることは自分が顧客になりきり、顧客のニーズを自覚できるのでとてもいいなぁと思います。

 

中村 「Prototype for One」という考え方がものすごく共感できるんです。ざっくり言うと、「超具体的な誰かのためのサービスは、きっとそれに共感する同じ思いを抱えている数百万人の人にも共感を生むはずだ」と。ペルソナ像がずれると、最大公約数のサービスになったとしても実は誰にも刺さっていないというか。だったら、自分たちが使いやすいサービスをつくる方が良いと思ったんですよね。

 

長田 僕らもクリエイティブを作った後の育成のステップまでお手伝いするのですが、「co-ba」も「cowcamo」も、作った後のサービスの見直しはどうしているんですか?

 

中村 「cowcamo」については、今はアプリも出して不動産業のテクノロジー化を進めています。元々は実空間側の「建築と不動産のハイブリッドカンパニー」だったのですが、「cowcamo」を作ることでテクノロジー要素が加わった感じです。最初はWordPressをカスタマイズして不動産メディアをつくり、そこに物件を載せていただけなので、実際の裏側はほぼ非テクノロジー(笑)。

 

長田 そうだったんですか!

 

中村 始めは不動産メディアと仲介業だけでしたが、セミナーでワークショップをやったり、マーケットデータを使ったコンサルティングもやりましょうと広がっていって。すると最初に付けたサービスのキャッチコピーの賞味期限が切れるタイミングが出てくるわけで。そこで皆で話して再定義しました。まさに、ビスポークさんがクライアントワークの中で普通にやっていることを、社内のクリエイティブチームとビジネスチームの間でやっています。

 

ここから質疑応答タイムへ。参加者の皆さまに、質問が書かれた付箋をホワイトボードに貼っていただき、お2人に答えていただきました。

 

.人手がかかるサービスにおいて、事業成長の戦略は?

デザイン+コンサルティングファームで

目指すは「7人の侍」

 

長田 僕らは、ブランディングの仕組みをクライアントの内部に浸透させるため、チームビルディングに特化したファシリテーターも社内にいます。クライアントの想いを形にする仕事ですので、万能な型などはありません。徹底的にマニュアル化を行えば効率化できると思うのですが、「想いの抽出」が薄くなってしまっては本末転倒ですので、日々模索しています。

 

中村 僕がいつも思うのは、デザインファームがビジネス的コンサルティングまでやっている事例が少ないということです。最近ビジネスに軸足を置いたコンサル会社がデザインファームを買収するニュースがよくありますが、その逆のパターン。御社は、デザインをやってきた人がビジネス側のメンバーを集め、そのチームでソリューションをつくりだしているというのが、スタンスとしてとても新しいなと。

 

長田 ありがとうございます。僕らが目指しているのは「7人の侍」みたいな感じです。無理に人を集めて拡大するよりも、ブランド構築において必要な各分野に特化した人を集めて、ビジョンを持って一緒にやりたいなと。今だと僕もメンバーと一緒にワークショップをして、一緒にポジショニングを引くんですね。そこから議論をして、自分の想像を超えるアイデアが出たときは感動します。クライアント社内のチームづくりまで行えるデザイン会社は少ないので、そこで他社と差別化していけたらという気持ちはありますね。

 

中村 プロフェッショナルが集まる組織であればあるほど、人数を増やして拡大最生産できるモデルは難しいわけじゃないですか。それぞれの特殊技能をいかにコワーキングさせた状態でお客さんと向き合うかが重要ですよね。となると、どんなメンバーを求めているのかが気になります。「7人の侍」の中で、欲しいジャンルのメンバーってどんな人ですか?

 

長田 実は今、自分の尊敬する会社で長年経営をされていて、定年退職をされた方にジョインしていただけるように進めているんです。自分で事業をやっていると、教えてもらえることって少ないじゃないですか。

 

中村 それ、わかりますね。実はツクルバにも社外取締役で入ってもらっている59歳の大先輩がいて、実は僕と共同代表の村上が新卒で入った会社で僕らを採用をしてくださった方なのですが、日々悩むことがあると「駆け込み寺」のごとく教えを請うんです。

 

長田 いいですよね!ちょっと怒られたいのもあります(笑)。それってすごく大事だと思います。

 

 

.「この事業はいける!」と思えるのはどんな時?

 

「やりたかったことはこれ!」

 

お客さま自身の言葉が生まれた瞬間にアクセルを踏む

 

中村 例えば「cowcamo」も、最初は失敗しても死なない程度で始めました(笑)。最初にかかったコストは200万円程度、物件の写真も僕が撮って、まずは自前でスモールスタートしました。でもプレスリリースはドヤ顔するんです(笑)。結構それで問い合わせがありまして。反応がいいなと思ったら、そこは臆せずに一気にアクセルを踏むんです。

 

長田 実はツクルバさんのホームページは、普段から弊社のメンバーにも見るように言っています。プレスリリースがうまいんですよね。

 

中村 このご時世、プレスリリースによるリーチとSNSによるリーチは別じゃないですか。プレスリリースは業界、SNSはユーザー。両方をやってみて「業界には注目されるがユーザーがついてこない」というのは避けたくて。基本はユーザーの方を向いてやろうとしています。

 

長田 使い分けしつつ、ですよね。

 

中村 そうですね。「co-ba」はクラウドファンディングで始めたのですが、2011年当時、クラウドファンディングの認知度がまだ低く、しかもコワーキングスペースとなると「なんだか分からない」と言われる時代で、僕たちのサービスが刺さる人がどこにいるのかわかりませんでした。それで思ったのが、クラウドファンディングを知っている人なら反応してくれるんじゃないかということ。その時の反応がよかったことから、「いけるな」と思いましたね。

 

長田 スモールスタートで実験しているという感じですね。

 

中村 はい。逆に長田さんはクライアントワークとしていろんな相談がある中で、「これはかなりてこ入れしないとまずいな」という場合も、そうでない場合もあると思います。うまくいきそうなタイミングは明確にあるものですか?

 

長田 最初、ブランディングやマーケティングの基礎講座みたいなことを社内でやらせていただいて、まずは言葉の使い方や内容を共有するんです。また、ワークショップを通じてやりたいことを掘っていくと、経営者が今まで言語化できていなかったことがうまく言葉にできてきます。私としても「自分のやりたいことはこれだ!」とクライアントに気付いてもらえた時は、かなりの手応えがありますね。

 

中村 僕も、このサービスに気持ちが乗っているなと思える時は自信を持ってアクセルを踏めます。大事なのは、誰かの言葉ではなく「その人の言葉」になった瞬間ですよね。

 

長田 今はワークショップを通じて一緒に話しながらいろんな苦労も共有していますが、時間がかかったとしてもちゃんと納得できる言葉ができてきて、それが組織全体で共有できると、僕らも嬉しいです。プロジェクトチーム全体が「わっ」と盛り上がる瞬間があったときはいいものができるなと感じられます。

 

中村 ロジックを超えてグルーヴが生まれる、というか。

 

長田 特にデザインの仕事だと、どこまでクライアントの本音を聞き出せるかということが重要ですので、話しやすい場づくりをしていくことは、ひとつポイントですかね。

 

中村 上流から関わっていくことで同じ風景を共有できているのは、クリエイティブにおいて一番健全な状態ですよね。

 

 

.企業経営上、デザインの重要性はどれくらい高い?

 

 

ズバリ、デザインは経営である!

 

長田 デザインの定義は難しいと思うんです。一般的に使われているのは狭義の場合が多くて、いわゆる「プロダクト」を指すことが多いですよね。でも組織のデザインもあれば、チーム横断で何かを考えていく、つまりプロジェクトチームのデザインもある。あらゆるものがデザインシンキングできますし、ビジョン・ミッションを作ることにおいても、デザインの考え方を差し込めると思っているので、「デザイン=経営」くらいの感じで考えていますね。

 

中村 僕も同じで、経営はデザインだと考えています。ただ経営者でデザインに理解のある人は多くない。経営層がデザインの力をどこまで信じるかというのは一つ大きなテーマだと思います。

 

例えば、机の上に散らばったアイデアの種から取捨選択して、プロトタイピングしてみることができるのは、デザインが持つ統合の力。世の中の複雑性が増しているからこそ、デザインが求めているように感じます。だから経営層のデザインへのリテラシーが高まっていくことはかなり大事だし、そういう人が増えるといいなと思っていますね。

 

 

長田 僕は、たとえば会社ロゴマークを作る場合でも、すぐに提案はしません。できるだけ経営層の方、現場の方含めて、自分たちの世界観を考えてもらうようにしています。例えばの例で言うと、「椅子、スポーツ、動物・・」のような9つくらいの言葉を提示させていただき、その言葉から想起する会社のイメージ写真を集めてもらいます。そうやって、自社の世界観に対して議論する場を一回でもつくると、自社のトーン&マナー(世界観)を知ることにつながる。また、議論に出たキーワードやエッセンスがロゴにうまく込められると、「自分たちの考え方がこのロゴに入っている」という気持ちになり、より会社のことを好きになりますね。

 

 

.「働き方改革」って、どうなの?

 

 

「働く場所を選択する自由」はあるべき。

本業も副業も、やりたいビジネスを一緒にできればいい

 

中村 最後に「働き方」についてちょっと話してみましょうか。長田さんは最近何か気になっていることはありますか?

 

長田 先ほど定年退職の話をしましたが、どこでも仕事ができる空間・環境に変わってきているなと感じています。大手さんが在宅勤務を導入したり、少しずつ時流としては出社しなくてもいい感じに向かっているじゃないですか。だから「co-ba」みたいなコンテンツがフィットする世の中になっているのかなという気はしていますね。

 

中村 場所を選択する自由はあっていいと思うんですよね。逆に言うと、これからは選択していかないといけなくなっていく。だから、働き方と働く場所というのはセットになっていくのかなと思っています。

 

長田 副業はどう思います?

 

中村 副業解禁と言われていますが、実はあまり副業とは言いたくないんですよね。しかもいわゆる「働き方改革」というのも、あまりフィット感はないです。クリエイティブな仕事をしている人ならわかると思いますが、仕事なのか仕事じゃないのか、ものすごく微妙な時間ってすごくあるじゃないですか。映画を見ている時だって、何かを考えながらだったりするわけで。

 

長田 確かにそうですね。

 

中村 そうなると「働く時間とは?」みたいな話にもなってきますよね。最近ツクルバでは「活動家申請」という制度を始めたんです。

 

長田 それ、何ですか?

 

中村 「ツクルバ=活動家集団である」というテーゼを掲げていまして、副業だろうがNPOだろうが遊びだろうが、好きなこと・やりたいことがあれば、会社でできるなら会社の中でリソースを使ってやればいいよという制度です。そのかわり会社に活動家申請を出してくださいというふうに決めていて。全社で申請を出した人を貼り出したりすれば、周りの人も応援したくなるし、そういう関係っていいなと思っています。既に何人か申請してくれていますよ。

 

長田 すごく実験的でなかなか踏み出せないけど、面白い取り組みですね!僕らのメンバーも、自分で会社をやっている人もいるので、働き方を制限すると動きにくくなるし、仕事のウエイトは都度相談しています。でも、基本的な考え方としては、自分たちがやりたいビジネスがあれば一緒にやればいいし、とは思っています。

 

中村 だから全部が本業というか副業というか、主と副もそれぞれですしね。

 

長田 そう。常に100の力を発揮したくなる目標を持てるのが理想なのかなと。そんなふうに思ったりしています。

 

 

PROFILE

中村 真広(なかむら・まさひろ)

株式会社ツクルバ 代表取締役 CCO/エグゼクティブ・プロデューサー

1984年生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。不動産ディベロッパー、展示デザイン業界を経て、2011年、実空間と情報空間を横断した場づくりを実践する、場の発明カンパニー「株式会社ツクルバ」を共同創業。デザイン・ビジネス・テクノロジーを掛け合わせた場のデザインを行っている。20154月から、建築とその周辺産業の発展に寄与するべく、一般社団法人HEAD研究会の理事に就任。昭和女子大学非常勤講師。著書に「場のデザインを仕事にする」(学芸出版社/2017)。

長田敏希(おさだ・としき)

株式会社ビスポーク 代表取締役 CEO

東京農業大学 非常勤講師 ブランドコンサルタント/クリエイティブディレクター

クライアントとの丁寧なヒアリング(対話)を重視しながら、組織の理念作成からBI(ブランド・アイデンティティ)開発、内外に向けたクリエイティブ開発まで、クライアントが対面している状況、市場環境を加味し、企業に合わせた隅々までフィットするコンサルティングを提供。世界三大広告賞のカンヌライオンズ、The One Showをはじめ、D&ADNY ADCiF デザイン賞、グッドデザイン賞、毎日広告デザイン賞など国内外の受賞多数。テレビ朝日「嫉妬に身を焦がすBAR」出演

株式会社ツクルバ代表 中村 真広氏と、代表 長田との講演レポートが公開されました。 「経営視点のクリエイティブが企業成長のカギになる!」

詳細は、下記リンク先ベージをご確認ください。

経営視点のクリエイティブが、企業成長のカギになる!

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